スウェーデンの公用語はスウェーデン語であり、英語は、多くのスウェーデン人にとっては外国語です。それでも、幼い子供や高齢者を除く殆ど全てのスウェーデン人は、非常に流暢で聞き取りやすく、文法上も正確な英語を操る事ができます。
一体なぜ、英語圏ではないスウェーデンで生まれ育ったごく普通のスウェーデン人が、そこまで高い英語力を身につける事ができるのでしょうか?今回の記事では、現地在住の筆者である私が、その秘訣をご紹介します。
スウェーデン人の英語力の実態
観光地であれば、どこの国でも、英語で接客ができる従業員がホテルやレストラン等に複数名いるという場合が多いと思います。
しかし、スウェーデンでは、観光地以外の地域でも、買い物や役所での手続き、医療機関への受診等、日常生活のあらゆる場面で、英語で対応してもらう事ができるのです。
これだけ誰もが英語を話すスウェーデンでは、就職活動においても、英語力は特殊能力とは見なされません。本当に、「英語とスウェーデン語は出来て当然」という認識です。
スウェーデンの大学生に関しては、大学入学の時点で、英語を使って高等教育を受けられるだけの高い英語力を習得しています。
そのため、英語で書かれた文献を読んだり、スウェーデン語を話せない外国人講師による英語での授業を受けるという事は、彼らにとってはさほど難しい事ではないのです。
読む、書く、聞く、話すの4技能をバランスよく習得させるスウェーデンの英語教育
スウェーデン人の高い英語力の背景には、「英語圏の映画やテレビ番組がスウェーデン語の字幕付きで放送される等、日常的に英語に触れる機会があるから」「音楽や映画等の英語圏の文化に興味を持ち、楽しみながら英語を学習しているから」「英語とスウェーデン語は比較的似ているから」等、様々な事情があります。
しかし、最大の要因は、「読む、書く、聞く、話す」という、英語でのコミュニケーションに不可欠な技能を万遍なく訓練させる英語教育と言っていいでしょう。
スウェーデンでは、小学校低学年から、遊びやゲームを交えての簡単な挨拶や自己紹介等を中心とした英語の授業が始まります。小学校中学年あたりまでは、主にスウェーデン語で授業が行われますが、学年が上がるにつれ、徐々にスウェーデン語を介する頻度は減り、英語のみでの授業に切り替わっていきます。
私自身、スウェーデンの大学へ進学するために、成人向けの学校で現地の高校レベルの英語コースを取りました。コースの内容は主に、英語で映画や小説、ニュース、各種記事等を理解し、その内容についての分析を英語でプレゼンテーションをする、あるいはレポートにまとめるといった、非常に実践的なものでした。
スウェーデンの学校の英語教育でも、文法や発音の正確性を高めるような指導はしていますが、それらは、英語で円滑にコミュニケーションを取るための手段であって、目的とは考えられていません。
「やりっぱなし」を防ぐスウェーデンの教育
現在のスウェーデンの教育制度では、中学校や高校に3年間ただ通うだけでは、高校や大学への入学資格を取得する事ができません。
中学校課程を修了し、高校入学資格があると認定されるためには、英語を含めた全ての指定科目で、一定以上の成績を得る必要があります。これは、高校卒業後の大学入学資格に関しても同様です。
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