「あなたは何をしている人ですか?」という質問に答えられるということは、スウェーデンで「一人前の自立した大人」として認められるための必須条件の一つです。

そのため、自分の従事している仕事や、専攻している学問について何も語ることがないという人の中には、初対面時にこの手の質問をされる度に劣等感を感じるという人も少なくありません。

しかしその一方、「高学歴でないこと」が原因で劣等感を抱くスウェーデン人は、非常に稀なのです。

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スウェーデン人が進路を選択する際の大前提

男女問わず、多くのスウェーデン人にとって、「自分が何の仕事をしているか」という事実は、「自分が誰であるか」という自己アイデンティティを定義づける上で非常に重大な意味を持っています。

そのため、スウェーデンの若者達は、「とりあえず入れる大学へ進学して、その後は就職できる企業へ入社する」という、その場しのぎの進路選択をしません。

どれだけ時間がかかっても、生き急いだりはせず、「自分が何をしたいのか」「自分はどんな人間なのか」を見極めた上で最良の決断をするために、国内外での様々な業種でのアルバイトやボランティア等に挑戦する等をして、自分自身と向き合います。

その結果、彼らは、「女性が長く働ける職場に勤めたい」というような漠然とした希望ではなく、「社会福祉学科へ進学してソーシャルワーカーになりたい」「法律を勉強して検察官になる」等の具体的な将来の目標を持つことができるのです。

大卒者=必ずしも企業にとって魅力的な人材ではない

特殊な才能を持った一部のエリートだけでなく、ごく平均的な成績を収めた若者達の大学進学が増加し続けている現在のスウェーデンでは、大学卒業者の希少価値というものは殆どありません。

新卒採用制度のないスウェーデン社会では、就業を希望する職種で必要とされる能力を学校教育で身につけていることに加え、関連分野での実務経験を持ち合わせた即戦力となる人材が求められます。

そのため、例えば、銀行事務や経理事務の採用者選考では、文学の学士号を持つ求職者ではなく、事務員として長年の経験を持つ高卒の求職者、あるいは高校や専門学校で、業務に特化した知識と技能を学んだ求職者が有利になるという事態が起こります。

偏差値のないスウェーデンの大学教育

スウェーデンには、偏差値の高い大学あるいは難関大学というものは存在しません。大学間の教育の質の差が極めて少ないとされているスウェーデンでは、どこの大学を卒業しても評価が大きく変わるということはないのです。

そのため、大半のスウェーデン人は、大学名を基準に志望校を選択するのではなく、自分が学びたい学科を設置している大学への進学を希望します。

人生のどの時点でも方向転換ができる教育制度

生涯教育制度の充実したスウェーデンでは、自分のキャリアに関して不満や劣等感を抱いていたり、社会に出てから学びたいことや就きたい職業が見つかった場合にも、年齢に囚われることなく学生に戻ることができます。

そのため、郵便配達員からエンジニアに転身する人、企業のマーケテイング部門へ就職した元調理師、高校教師から作業療法士になる人等、転職後の人生は本当に様々です。

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ABOUTこの記事をかいた人

近藤万祐子

神奈川県横浜市出身の30代の日本人女性です。2012年に、スウェーデン人男性と結婚し、スウェーデン南部へ移住しました。現在は、現地の大学で心理学と教育学を勉強しています。また、学業の傍ら、スウェーデン在住ライターとして、海外生活、留学、異文化理解、ヨーロッパと日本の教育などに関する記事を投稿しています。