また、社会人が大学入学資格を取得するために成人学校に通ったり、在籍している大学の学科を中退し、別の学科に入学し直すという選択をすることも同様に一般的です。

一度社会に出た人が、生活を変えることなく学生に戻ることのできる背景には、EU加盟国出身者あるいは居住者であれば学費が無料であること、学生本人の意思だけで借り入れ可能な教育ローン、国による学生のための生活補助金の支給等に代表される充実した社会福祉制度があります。

大卒者=高収入とは限らない

スウェーデンで高学歴がもてはやされないもう一つの理由として、大卒者が必ずしも収入面で高卒者を上回る訳ではないという現実があります。

特に、医療、社会福祉、教育関連等の分野で大卒者として専門職に就いた場合、製造業や鉱業に従事している高卒者の平均収入を下回るという状況にもなり得ます。

そのため、高等教育を要しない職業に従事している人の中には、大学入学に必要な成績を収めてはいるものの、職場環境にも待遇面にも満足しているため、敢えて進学をしないという選択をする人も少なくないのです。

自分自身と真剣に向き合ったからこそ辿り着く、自分にとっての理想の人生

このように、スウェーデン人は、自分の人生に真剣に向き合う中で、自分が生涯情熱を持って取り組みたいことを見つけ出し、それを実践するために必要な知識と技能の習得を目的として、大学やその他の教育機関へ進学します。

また、自己の成長や環境の変化に合わせて、キャリアの途中でも生き急ぐことなく何度も立ち止まり、進路の再考をするのも自由です。

自分にとっての理想の人生について、当事者意識を持って熟考した結果、大学へ進学しないという選択をしたとしても、それは彼らにとっては何ら恥ずかしいことではないのです。

ABOUTこの記事をかいた人

神奈川県横浜市出身の30代の日本人女性です。2012年に、スウェーデン人男性と結婚し、スウェーデン南部へ移住しました。現在は、現地の大学で心理学と教育学を勉強しています。また、学業の傍ら、スウェーデン在住ライターとして、海外生活、留学、異文化理解、ヨーロッパと日本の教育などに関する記事を投稿しています。