語学学習や海外での生活体験を目的とした留学について、「時間とお金がもったいない」「留学という大義名分の下、外国で長期間に渡って遊ぶだけ」といった先入観や否定的な考えを持つ人は少なくありません。

今回の記事では、イタリアで1年間の語学留学を経験後、現在はスウェーデンに居住している筆者の視点から、語学留学やワーキングホリデーに対する批判的な指摘について考察します。

正規留学と語学留学の違い

ワーホリは時間の無駄

海外の大学や大学院を卒業し、学位を取得することを目的とした正規留学では、日本の高校で一定以上の成績を収めていることに加え、高度な語学力の証明が求められます。

海外の大学に入学した以上、現地語を母国語としない外国人であっても、現地人と同じ条件で試験や課題に取り組むことが前提です。

一方、語学留学の場合、学位取得を目的とせず、留学先の国で生活体験をしながら言葉と文化を学ぶことが趣旨となっています。

そのため、大学入学準備コース等を除いて、入学の際に高校の成績証明や語学力が問われることはありません。

このように、誰でも気軽に入学可能であり、在学中も単位修得に伴うプレッシャーがないという点に加え、非ネイティブを対象とした教育機関で一日の大半を過ごすため、現地人と共に学ぶという体験をすることが難しいという点が、語学留学への評価が低い要因となっています。

日本にいながら外国語を学習できる環境が整いつつある

日本国内で、独学や語学講座の受講を通じて外国語を習得した人達の中には、「今の時代、外国語なんて日本である程度勉強できるのに、なぜわざわざ外国へ行ってまで初級レベルの語学学習をするの?」と疑問に思う人も少なくありません。

確かに、現在では、英語だけでなくヨーロッパやアジア各国の言語を学習する際に役立つ良質の教材が多数販売されている他、インターネット上で各国語の音声や動画を視聴したり、格安の外国語レッスンを受ける等、日本にいながら気軽に外国語を学習できる環境が整いつつあるのも事実です。

留学さえすればネイティブレベルの語学力が身につくという幻想

語学留学の意義やコストパフォーマンスが疑問視されるもう一つの原因として、1~2年間の語学留学をしても、「仕事で通用するレベルの英語力」という社会的に評価される結果を残すことは、中々難しいという事情が挙げられます。

海外経験のない人が、「留学さえすれば大した努力をしなくてもネイティブ並みの語学力を習得できる」という非現実的な期待を抱くというのはよくあることです。

しかし、実際に成人学習者が上級の語学力習得を目指す際には、様々な場面での会話や議論の実践のみならず、受験生になったつもりで、文法の知識や語彙、リスニング力の強化、文章力の向上等、長期間に渡って地道な勉強に取り組むことが不可欠なのです。

これだけの努力を留学期間中に継続しても、学業や仕事上でネイティブと対等になれる訳ではありません。

海外の大学への入学や語学力を必要とする職場への就職を実現した後も、非ネイティブである以上、語学力向上のための努力を続けることは必須です。

何も習得せずに帰国した留学経験者も少なくないという現実

留学=ただのお遊びという偏見が増長されてしまう背景には、以下のような留学生活を送って帰国した人も少なくないという事情があります。

• 語学学校の授業時間外に自主的に勉強をしなかった
• 他の日本人留学生とのみ行動を共にし、現地人や他国の留学生と交流しなかった
• 自由時間の殆どを日本語のウェブサイトを閲覧したり、日本語の動画を視聴する等をして過ごしていた
• 現地で出会った恋人と学業に支障の出るような交際をしていた

自己啓発を目的とした海外での長期滞在

日本社会では、いわゆる自分探しのためにお金や時間を投資する人に対して、「いい年をして夢みたいなことを言っている」「ただの現実逃避では?」等と冷ややかな視線が向けられがちです。

そのため、自己啓発を目的とした留学に関しても、「意味がない」と一蹴されてしまう風潮があります。

確かに、留学さえすれば誰でも自動的に人間的成長や視野の拡大を実現できる訳ではありません。

しかし、「異国の言葉や文化を学ぶ中で自分自身と向き合いたい」「新しい価値観や多様な生き方に触れてみたい」等、何かしら目的意識を持ち、主体的に考えて行動することで、留学生活が帰国後の自分の人生に好影響を与える可能性は十分にあると言えます。

留学経験を何らかの形で社会に還元する

より多くの留学経験者が、海外生活で得た自身の経験をブログや留学支援サイト上等で他者に向けて発信する、留学を通じて培った主体性や行動力、自己肯定感を生かして帰国後も様々な事に挑戦する等、それぞれ自分に合った方法で留学経験を社会に還元することで、留学に対する偏見を減らすことができるのではないでしょうか。

ABOUTこの記事をかいた人

近藤万祐子

神奈川県横浜市出身の30代の日本人女性です。2012年に、スウェーデン人男性と結婚し、スウェーデン南部へ移住しました。現在は、現地の大学で心理学と教育学を勉強しています。また、学業の傍ら、スウェーデン在住ライターとして、海外生活、留学、異文化理解、ヨーロッパと日本の教育などに関する記事を投稿しています。